
プロが教える体型別のおすすめチェアと正しい座り方とは?ワークチェア専門店「WORKAHOLIC」で聞いてきた
コロナの影響で企業のリモートワーク導入が進み、自宅で仕事をする人が増えていますね。「そろそろちゃんとしたチェアが欲しいけど、どうやって選んでいいか分からない…」という方、多いのではないでしょうか?
そこで今回、Kagg note編集部が訪れたのは、東京・浅草橋にあるワークチェア専門店「WORKAHOLIC(ワーカホリック)」。チェアコンシェルジュの伊藤 僚範(いとう とものり)さんに、チェアの正しい座り方や選び方について聞いてきました!
編集部スタッフのI(男性)とS(女性)が、それぞれの悩みをもとにオススメの商品を紹介してもらったので、ぜひ参考にしてみてくださいね♪
<チェアを探している編集部スタッフの悩み>
編集部I
男性。ガッチリ体型。腰痛に悩んでいる。せっかく買うなら高機能なチェアが欲しい。
編集部S
女性。小柄。肩こりに悩んでいる。家のインテリアに合わせやすいデザインを重視。
WORKAHOLIC店内の様子
今回案内していただいたチェアコンシェルジュの伊藤さん
編集部 はじめまして。今日はよろしくお願いいたします!
伊藤さん いらっしゃいませ。ご来店いただきありがとうございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
編集部I 早速なのですが、僕たち、リモートワークで使えるチェアを探してまして。どうやって選んだらいいのか、教えていただきたいです。
伊藤さん かしこまりました。それでは、まずチェアを選ぶ前に、正しい座り方についてご説明しますね。
編集部S なるほど、お願いいたします!
チェア選びの前に、正しい座り方から教えてくださるとのこと
伊藤さん まず、普段どんな姿勢でチェアに座っていらっしゃいますか?
編集部I えっと、あまり意識したことはないのですが、こんな感じでしょうか…。集中していると、ついつい前傾姿勢になってしまうことが多いですね。
伊藤さん 人間の頭は重たいので、前傾になると首や肩で支えようとして負担がかかり、背中も張ってきてしまうんですよね。できるだけ、立っているときと同じように首の真上に頭が来るようにして、重心がしっかりと取れている状態を意識してみてください。
編集部I なるほど。頭を首の真上に持ってくる…と。
伊藤さん 仕事中は猫背になりやすいので、背筋はしっかりと伸ばしてあげる。そして、座面の奥まで深く腰掛けて、背中をぴったりと付けてあげることが大事です。チェアの背面には、腰の部分にS字カーブがあるので、そこに身体をフィットさせるように座ってみてください。
座面の高さや腰当てを細かく調整してくださる伊藤さん
編集部S 結構深くまで腰掛けるんですね。普段あまり背もたれに寄りかからないので、ちょっと変な感じです。。
伊藤さん おっしゃるとおり、最初は抵抗がある方も多いです。でも、だんだん慣れてきますよ。「背もたれに寄りかかっているとだらしない」というイメージがあったりもしますが、本来背もたれは寄りかかるためにあるものなので、無理に背中や腰を浮かせる必要はないんです。
深く座ったら、ひざの角度が直角になるように、床に足を置いてください。このとき、ひざの裏側がチェアの座面の先端にくっつかないようにします。
(ひざの角度なんて、意識したことなかったかも…)
伊藤さん あと、人間工学に基づいてお話すると、実は腰の角度はあまり直角すぎてもダメなんです。直角の状態から、10度ぐらいの範囲内で傾けると自然になります。
編集部I へぇ~、それは初耳です。
伊藤さん 普段、肘はデスクの上に乗せていますか?
編集部I いや、あまり乗せてないですね。
編集部S 私も、肘は宙ぶらりんになっていることが多いです。
伊藤さん 肘から先は、人間の身体のなかでは案外重さがある部位なので、できるだけ支えてあげた方が楽ですよ。やり方は主に2つあって、1つはデスクの上に乗せる方法、もう1つはチェアのアームレスト(肘置き)に乗せる方法です。
デスクの上に肘を置く場合は、チェアをぐっと引いて、デスクの下に身体をしっかり入れましょう。このとき、肩が上がってしまう場合は、デスクとチェアの高さが合っていません。チェアが低すぎるので、座高を調節してみてください。
アームレストに肘を乗せる場合は、先ほどより少しデスクとチェアの距離を離しても大丈夫。肘の角度は90度ぐらいがベストで、肩が上がっていないことを確認します。いずれの場合も、腕は必要以上に伸ばさないように注意してみてください。
編集部S なんだか、身体のあちこちが支えられているような感覚です。
伊藤さん ここまでが、チェアの正しい座り方です。どれだけいいチェアを使っても、座り方が間違っていると正しい効果を得られないので、ぜひ意識してみてくださいね。
伊藤さん それでは、実際にチェアを探してみましょう!お二人が抱えているお悩みや、欲しいチェアのイメージを教えていただけますか?
編集部I じゃあ、まずは僕から。ガッチリ体型で肩幅も広いので、大きめのチェアがいいなと。あと、腰痛に悩まされているので、腰の負担を軽減してくれるような商品がいいです。
伊藤さん かしこまりました。大前提として、チェアを選ぶ際に一番チェックしていただきたいのは、座面と背面です。座面の座り心地とサイズ感、背面の腰にあるS字カーブがフィットしているか、を確認していきましょう。
まずご紹介したいのが、エルゴヒューマンのPRO ottoman(プロ オットマン)というチェアです。背もたれや腰のサポートもしっかりしているし、座面も広いので、体格の大きな男性にはオススメですよ。
エルゴヒューマンのPRO ottoman
編集部I うん、これは窮屈さもないし、結構いい感じです。
伊藤さん あとポイントになるのは、座面の素材ですね。座面は大体メッシュかクッションかの2択になってくるのですが、身体の支えられ方が全然違うんです。
メッシュはある程度の硬さがあり、スプリングが効いているので、全体の沈み込みで身体を安定させるのが特徴です。クッションに比べると通気性が高く、夏場は特に人気が高いですね。ただし、サイズ選びを間違えると、端のフレームが身体に当たってストレスになり得るので、気をつけなければいけません。
一方、クッションは体重が乗っている部分だけが沈み、周辺部分のクッションは沈んだところにぐっと寄せられるので、包み込まれたような座り心地が特徴。お尻のホールド感が強い、とも言えます。座面の端にフレームがないものが多いので、身体に当たって痛いということもありません。たとえば男性に多いのですが、足を大きく開く癖があったりすると、フレームに太ももが当たってしまうので、クッションの方が良かったりします。
メッシュは弾む感じ、クッションは受け止めてくれる感じで、どちらの方が絶対良いということはなく、座る方の体型との相性がありますが、最終的には好みで選んでいただくのが良いと思います。
編集部I 僕は元々、通気性の高いメッシュがいいなと思っていたんですが、なんとなく座り比べた感じだと、クッションの方が好きかもしれないなぁ…。
伊藤さん 座面がクッションで、背中がメッシュというタイプもあるので、組み合わせてあげるのもオススメですよ。ご自宅であれば自分好みの室温に設定できますから、蒸れない程度に空調を効かせたりして、うまく調節してあげると快適性が増します。
メッシュかクッションか、素材もしっかり選ぶことが大切
編集部I ちなみに、ヘッドレストはあったほうがいいですか?
伊藤さん 疲れたとき、頭をヘッドレストに預けたい場合は、付けておくと便利ですね。でも、逆にヘッドレストがあると邪魔に感じたり、首肩が緊張してしまう方もいるので、なくても全然支障はないです。使い方とお悩み次第で選んでいただければ大丈夫ですよ。
腰痛のお悩みとガッチリした体格から考えると、オカムラのChoral(コーラル)という商品もオススメです。良かったらぜひ座り比べてみてください!
オカムラのChoral(写真中央)
編集部S じゃあ、次は私ですね!彼とは真逆で、小柄な体型です。悩みとしては、肩こりがひどいのが気になっています。機能性をそれなりに重視しつつも、どちらかというと自宅のインテリアを邪魔しないデザインがいいなと…。
伊藤さん 体格が違えば当然、オススメする商品もがらっと変わってきます。チェアのサイズが合わないとしっかり身体を支えられなくなってしまうので、女性のお客さまにはコンパクトなものをご紹介することが多いですね。
最近人気が高いのはこちら、イトーキのvertebra03(バーテブラ03)という商品です。背面の背丈が低いものであれば、存在感も出過ぎないので、お部屋の雰囲気に馴染みやすいと思います。
イトーキのvertebra03
編集部S コロンとしていて、可愛らしいデザインですね!ワークチェアって、無機質でゴツゴツしているものが多い印象だったのですが、これはすごく好みです。
伊藤さん キャスターベースもコンパクトで、すっきりしていますよね。生地の種類やフレームの色も、豊富なバリエーションから選べますよ。最近は、ご自宅でワークチェアを使うニーズも増えてきて、従来の “いかにも定番” という見た目ではなく、ナチュラルで親しみのあるデザインも増えてきています。
編集部S このチェアは、腰の部分にだけサポートがあって、背中にはシートがないんですね。私は肩こりがひどいのですが、背中が浮いていても大丈夫でしょうか…?
伊藤さん 肩こりは、実はチェアの背面の高さにはあまり左右されないんです。どちらかというと、デスクとチェアの高さのバランスとか、姿勢の問題が大きいんですね。しっかりと腰のサポートがあって、正しい姿勢で長時間座っていても違和感がなければ、背丈が低いチェアでもまったく問題はないです。
編集部S そうなんですね!安心しました。
伊藤さん 背中のホールド感があった方が落ち着く場合は、ハーマンミラーのSAYL Chair(セイルチェア)もオススメですよ。こちらもデザイン性が高くて、すっきりとした見た目なので、女性に人気が高いです。前傾チルトといって、座面が前に傾く機能がついているので、多少前傾姿勢になっても疲れにくいのがポイントです。
ハーマンミラーのSAYL Chair
編集部S こちらのデザインも素敵ですね~。リビングに置いても全然浮かなそう。
伊藤さん 先ほどお話にあがった肩こりの解消法としては、正しい座り方を実践しつつ、デスクの上に傾斜台を置くのもオススメです。ノートPCをお使いの方にはよくご紹介するのですが、画面が高くなることで視線も上がって、頭が首の真上に乗り、首肩への負担が減ります。あと、腕の接地面積が増え、肘の角度も自然になるので、肩の力が抜けやすくなるんです。
傾斜台を置くだけでも、肩こり解消には効果的
編集部S これは楽ですね!仕事中ずっとタイピングをしているので、助かります。
編集部I 傾斜台は僕も欲しいです!他にも、チェアと一緒に使える便利アイテムってありますか?
伊藤さん フットレスト(足置き)を置くのもいいですね。ご自宅のデスクと合う高さに座高を調整すると、足が床につかなくなってしまうことがあります。そうすると、ふくらはぎがチェアの座面に押し付けられて、血流が悪くなり、むくみや冷えに繋がってしまうんです。
あと、後傾姿勢でチェアに座っているうちに、お尻がずるずると前に滑ってきてしまう方がいるのですが、フットレストにかかとを乗せて踏み込むことでストッパー代わりになるので、姿勢が崩れにくいというメリットもあります。
フットレストは、厚みのある本などを代用しても良いとのこと
編集部I なるほどー。理にかなっていますね。
伊藤さん あと、ご自宅にチェアを置かれる場合は、床にラグマットを敷くといいと思います。もちろん、床に傷がつかないようにする目的もあるのですが、普通のカーペットよりも毛足が長いものを選ぶことで、チェアがガタガタしづらくなり、キャスターも前後に滑らなくなるんです。
WORKAHOLICにいらっしゃるお客さまのなかには、一般的なデスクワークの方以外にも、タブレットで絵を描く漫画家さんや、受験勉強中の学生さんがチェアを探されていたりするのですが、こうした方はどうしても前傾姿勢で作業するのが前提になります。身体の重心が前に出ると、自分のお尻でチェアを後ろに押してしまうので、フローリングだとすぐにキャスターが滑っていってしまうんですよ。こうした場合も、下にラグマットを敷くことでかなり改善されます。
編集部I これは、今すぐにでも取り入れられる豆知識ですね。
編集部S いただいたアドバイスを参考にしながら、他のチェアも座り比べてみてもいいですか?
伊藤さん もちろんです!店内の商品全て座られる方もいらっしゃるので、ぜひ自由に試してみてください。
もしお時間が許すようであれば、実際にデスクの前で10分~15分くらい座ってみていただけると良いと思います。長く座っていると、ファーストインプレッションから変わってくる場合もあるので、複数比較しながらフィットするものを見定めていただければと思います。
店内にある昇降デスクで、自宅の机の高さを再現することも可能
編集部I ありがとうございます!色々と見てみます。「いいチェア」と一口に言っても、座る人の体型や悩みによって全然選択肢が変わってくるんだなぁと、改めて気付かされました。
伊藤さん こちらこそ、チェアの重要性を少しでもご理解いただけたのであれば、何よりです。
ここまでチェア選びのポイントを色々とお話させていただきましたが、最後はやはりご自身の目で見て、実際に座って、納得感を持って選ばれるのが一番です。同じ商品でも人によって感じ方は違いますし、デザインの好みもそれぞれです。明らかに体格に合わないチェアを選ばれている場合は、別の商品をご提案する場合もありますが、それでも決して無理に誘導するようなことはしません。
もしご希望でしたら、引き続き一緒に店内を回らせていただくこともできますし、ご自由に試していただくこともできます。何か分からないことや気になることがあれば、いつでもお声がけいただければと思います。
編集部 じっくりと教えていただき、とても勉強になりました。ありがとうございます!
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WORKAHOLICのお店に伺うまでは、「専門的な知識がない状態でのチェア選びはハードルが高いな…」と心配でしたが、チェアコンシェルジュの方がしっかりと相談に乗ってくださるので、安心して商品を選ぶことができました。仕事中の姿勢や悩み、どんなシーンで利用するかなど、実際にチェアを使う人の立場に立って提案していただけるのは、とても心強かったです。
長く使えるワークチェアは10万円~20万円の価格帯が多く、決して安価な商品ではないため、せっかくなら自分に合ったチェア選びをしたいですよね。そして、いい商品を買うだけではなく、正しい座り方と使い方を学んで、効果を最大限に発揮させることも大切なのだと、改めて実感しました。
ちなみに、コロナの影響で在宅勤務用にチェアを探されている方が急増し、3月~5月頃は値段や納期を決め手にされる方も多かったそうです。これからじっくりとチェアを購入される方に向けて、伊藤さんは「まずは今抱えている悩みをいかに解決できるかを重視して、長く使う前提でぜひチェア選びをしてもらえたら」と話していました。
伊藤さん、色々と教えていただきありがとうございました!
2020年8月現在、WORKAHOLICでは完全予約制にて営業を行っています。来店できない方には、電話やメールなど各種方法でも対応されているそうです。
自分の体型や悩みにあわせた最適なチェア選びを、プロのチェアコンシェルジュに提案してもらいたい方は、ぜひお問い合わせしてみてはいかがでしょうか?
WORKAHOLIC
https://www.iamworkaholic.jp/
〒103-0002 東京都中央区日本橋馬喰町2丁目7-15
ザ・パークレックス日本橋馬喰町 1F
JR総武線「浅草橋」駅西口から徒歩3分 / 都営浅草線「浅草橋」駅A2出口から徒歩5分 / JR総武快速線「馬喰町」駅C4出口から徒歩5分 / 都営新宿線「馬喰横山」駅から徒歩9分
OPEN:MON-FRI 12:00-19:30 / SAT-SUN 12:00-19:30
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